乃木将軍・金沢空家の幽霊
どんな伝承か
乃木希典が学習院長だった頃、生徒に語ったとされる体験談。明治二、三年頃、二十余歳の乃木は金沢で一軒の空家を宿とした。眺めのよい三階に床を取るよう老婆に命じたが、二度とも二階に取られていたので、三日目は無理に三階へ運ばせて寝た。すると誰かが部屋へ入ってきて、女の声がし、蚊帳の上から顔を寄せて耳元に近づこうとする気配がした。跳ね起きると誰もおらず、一晩中これが繰り返された。後で、先代の主人が不義をした妾を三階の柱に縛って飢え死にさせ、それ以来幽霊が出ると聞いたという。
原典より
女の声がして、蚊帳の上から顔をよせて、耳の側へ近づけようとする様子。—— 科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。