乃木大将と金沢の三階の女
どんな伝承か
乃木大将が明治四十二年六月二十四日に学習院の生徒へ語った若い日の体験。明治二、三年ごろ用事で加賀の金沢へ行き、戊辰戦役後で空き家になっていた萩原という人の三階建ての家を宿にあてがわれた。三階に床を取れと言っても世話の老婆は二階に取り、強いて三階で寝ると、女が部屋に入ってきて蚊帳越しに顔を耳元へ寄せてくる気配がする。跳ね起きると誰もおらず、寝ればまた現れ、一晩じゅう眠れなかった。後で聞けば、その家では先代のころ不義をした妾を三階の柱に縛りつけて飢え死にさせ、以来三階に妖怪が出るという話だった。
原典より
女の声がして蚊帳の上から顔を寄せて自分の耳の辺へ近附けようとする様子ゆゑ、フト跳ね起きて見ると誰れも居ない。—— 心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象の科学(小熊虎之助・1974年(昭和49年))
『心霊現象の科学』は、小熊虎之助が心霊現象を科学の立場から論じた研究書で、序とあとがきに昭和四十九年四月の日付がある。コックリ・自働書記・読心術・憑きものなどを心理学で説ける偽心霊現象とし、精神感応・交霊・千里眼・心霊物理現象を真実の心霊現象として心霊現象研究会の報告から吟味する。福来友吉が能力者とした三船千鶴子・長尾夫人・高橋夫人・三田光一の透視と念写は山川健次郎らの実験と照らして疑い、あとがきでは井上円了以来の研究史を概説する。