亡母が飴を買って子を育てた夜泣き松
どんな伝承か
下唐子の里に夜泣き松という松があった。昔、その松の下で身元の知れない女が行き倒れ、そこに無縁仏として葬られた。その夜から、近くの飴屋に一文銭を持って飴を買いに来る若い女が現れ、七日目には金がないから貸してほしいと言った。不審に思った爺さんが後をつけると、女は無縁仏の前で消え、地の底から赤ん坊の泣き声がして、やがて止んだ。名主に話して棺を掘り出すと、女の亡骸に抱かれて飴をしゃぶる赤ん坊がおり、子のない飴屋の夫婦が育てたという。この松の根もとに竹の手桶に酒を入れて供えると、赤ん坊の夜泣きが治ると信じられていた。
原典より
すると女の人は無縁仏の前まで行くとふっと消えてしまい、地の底の方で赤ん坊の泣く声が聞え、間もなく赤ん坊の泣き声は止んでしまった。—— 東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史)
『東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説』は、東松山市の市史の民俗編のうち、伝説の部分を収めたものである。岩殿山の悪龍退治や比企一族の落人の話、永福寺の河童の詫証文、箭弓神社の銭絵馬、狐に化かされた話、神かくし、雪女郎など、市内の寺社・坂・沼・塚にまつわる四十六話を載せる。多くは会話を交えた物語の形で書かれ、筆者が幼い頃に母から聞いた話や古老から聞いたままの話も含み、末尾に〔 〕で由緒や文献の注を添える。