姪藻ヶ池の底の屋敷で藍染を覚えた息子
どんな伝承か
高坂宿の中ほどに、紺屋と呼ばれる家がある。まだ農家だったころ、親孝行な息子が団子正月の前日、団子木を取りに幟脚塚の姪藻ヶ池へ行った。池に張り出した枝を切ろうとして鉈を池に落とし、追って飛び込んだが気を失った。気づくと日の照る花の野原で、美しい姫に介抱されていた。屋敷には藍瓶が並び、大勢が糸や布を染めており、息子は藍染めを手伝って三日を過ごした。両親が恋しくなって帰りを願うと、姫は鉈を返し、目を閉じてまっすぐ歩けと教えた。目を開けると池の端に立っており、家では三年行方知れずとして葬式を出すところだった。息子は覚えた技で紺屋を開いたという。
原典より
息子が飛ぶようにして家へ帰って見ると、家の人達は団子木を採りに行ったまま行方知れずになり、三年の歳月が過ぎたのでも早帰らぬものと思い葬式を出す所だった。—— 東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史)
『東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説』は、東松山市の市史の民俗編のうち、伝説の部分を収めたものである。岩殿山の悪龍退治や比企一族の落人の話、永福寺の河童の詫証文、箭弓神社の銭絵馬、狐に化かされた話、神かくし、雪女郎など、市内の寺社・坂・沼・塚にまつわる四十六話を載せる。多くは会話を交えた物語の形で書かれ、筆者が幼い頃に母から聞いた話や古老から聞いたままの話も含み、末尾に〔 〕で由緒や文献の注を添える。