白狐の翁が娘を救った与作稲荷
どんな伝承か
勝山城の殿様勝山太郎は、中阿久津の満願寺で評判の働き者だった万蔵一家を譲り受けた。三年勤めて約束の田一枚を得た万蔵は、城の近くに藁の祠で稲荷を祀り朝晩拝んだ。イナゴと凶作の年にも万蔵の田だけが実ると、太郎は肥料を盗んだと責め、田を取り上げて一家を追い出した。病弱な息子には巳年生まれの娘の生き胆が効くと占われた太郎は、それが万蔵の娘だと知るや詫びたふりで一家を呼び戻し、山男に娘を襲わせた。だが斬られたその時、白狐を連れた白髪の老人が白い雲に乗って現れ、娘を抱えて消えた。三本杉の根元で娘と再会した万蔵を見て、太郎らが埋めた所を掘り返すと赤い御幣束が一つあるだけで、斬った胸には胆の代わりに白い御幣束が入っていた。万蔵はその杉のそばに祠を建て、これが今の与作稲荷だという。
原典より
万蔵が娘っこと出っかしたどごが、三本杉の根っこんとごで、ほれが今の「与作稲荷」なんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。