竜宮に通じる釜が渕の貸し椀
どんな伝承か
勝山の釜が渕は底が見えないほど暗く深い淵で、昔は竜宮城までつながっていたと言われた。竜宮の乙姫は心優しく、里の者が困って願うと何でも貸してくれたという。人寄せで茶碗が足りなかった村人が、淵に向かって茶碗百人前を貸してほしいと三度唱えると、水中から茶碗が次々に浮かんで岸辺に寄り、ちょうど百個がそろった。用が済んで礼を言い淵へ流して返すと、茶碗は渦を巻いて沈んでいった。ところがある人が、返す最後の一つがあまりに美しいので惜しくなり、懐に入れて持ち帰った。それからは誰がいくら頼んでも何も浮かばなくなり、怒った乙姫が竜宮への道をふさいだのだろうと語られる。
原典より
ほしたら、おったまげっぺぇ、水ん中がら、ポカン、ポカンちて茶椀が浮がんできたんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。