津久井郡の松明と怪物除け
どんな伝承か
津久井郡の婚礼では、嫁が婚家に入るとき、両親のそろった男の子と女の子が松明を持って入口の左右に控えた。嫁が近づくと火の勢いを弱め、地につけた松明の上を、嫁は菅笠をかぶってまたいで家に入ったという。ひとたび嫁いだからには水火も辞さないという意味だとも、嫁に化けてやって来るかもしれない怪しいものを松明の火で照らし出すためだとも説明された。婚礼はたいてい夕方から行われたので明かりの役もあったが、主婦となる女性を婚家の火で清める意味が大きかったとみられる。
原典より
これは一旦婚家に入る以上は水火を辞せずの意であるとか、嫁に化けてくるかもしれない怪物を松明の火でてらすのだとか説明されている。—— 神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史)
『神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話』は、県史講座要録の県下の民俗篇に収められた、中村亮雄の「伝説と昔話」である。柳田国男の白米城伝説の研究を手がかりに、三浦半島の二反ヶ城、鶴見の見返し坂、湯河原の石橋山合戦の伝承など県内の伝説を取り上げる。昔話は本格昔話と派生昔話(化物譚・笑話・動物昔話)に分け、藤沢・津久井・平塚などの類話を並べて世間話にも触れる。「はじめに」「伝説」「昔話」「あとがき」の四節からなる。