屏風を壁と思って夜通し支えた男
どんな伝承か
特定の村に結びつけて語る笑話を、おろか村話という。上津久井の一帯では、奥道志の者を主人公にした話がいまも伝えられている。奥道志とは山梨県の道志村を指す。その一例。奥道志の者が仲間と伊勢参りに出て、宿に泊まった。うっかり屏風を倒してしまい、宿の壁を倒したものと思い込んで、二人がかりで両側から引っ張って立てようとするが、どうしても立たない。とうとう一晩じゅう二人で押さえていた。朝、宿を発つときに番頭が、お帰りにもぜひお泊りをと言うと、泊まるのはかまわないが引っ張り壁だけは勘弁してくれ、と答えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史)
『神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話』は、県史講座要録の県下の民俗篇に収められた、中村亮雄の「伝説と昔話」である。柳田国男の白米城伝説の研究を手がかりに、三浦半島の二反ヶ城、鶴見の見返し坂、湯河原の石橋山合戦の伝承など県内の伝説を取り上げる。昔話は本格昔話と派生昔話(化物譚・笑話・動物昔話)に分け、藤沢・津久井・平塚などの類話を並べて世間話にも触れる。「はじめに」「伝説」「昔話」「あとがき」の四節からなる。