大尽の息子が池の主になった話
どんな伝承か
臼田町上小田切に伝わる話である。二千坪ほどの田を持ち、カミセッチンと呼ぶ上等の便所まで構えた大尽の息子が、かねてから双子池の主になりたいと口癖のように言っていた。ある日、息子がふっと姿を消し、人々が探し回るうち、その言葉を思い出して双子池へ捜しに行った。息子は雄池の淵から身を投げていた。やがて雄池の真ん中に竜神が頭だけを出し、自分は池の主となってこの姿に変わったのだから、もう探さないでほしいと告げて水中へ引っ込んだ。池のほとりには、息子の履いていた草履がそろえて置かれていたという。
原典より
雄池の真中で竜神が頭だけ出して、「おれは双子の池の主になってこんな姿になってしまったから捜さないでくれ」と告げてしっこんでしまった。—— 長野県南佐久郡八千穂村佐口民俗誌稿 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県南佐久郡八千穂村佐口民俗誌稿
『長野県南佐久郡八千穂村佐口民俗誌稿』は、八千穂村佐口の暮らしと伝承を記した民俗誌の稿から、第十三章「口頭伝承」とその前の章の末尾を抜き出したものである。前の章の手まり唄・子守唄に続き、佐口へ嫁いだ桜井トラ氏から昭和五十一年に聞いた昔話、双子の池の竜神や白駒の池、大河原峠の行き倒れなどの伝説、火の玉の話、子どもを戒めることわざを収める。伝説には地理や類話を補う注を付し、佐口の外の土地の話も含む。