二つに切られた身代わり観音
どんな伝承か
帰雁記は、御簾尾という所に竜沢寺という古寺があり、これも曹洞の派で、開山の梅山和尚は奇特の聞こえ高い僧だったと記す。修行のころ、ある民家に宿ったところ、深く酒に酔って帰ってきた主の男が、僧を泊めたことを怒って僧を害した。夜が明けて酔いが覚め、あたりを見ると僧はもとのまま座している。不審に思って尋ねると僧にも心当たりがなく、常に持つ観音の力かと包みを開いてみると、尊容が二つに切られていた。主は驚き悲しみ、夫婦ともに髪を下ろして受戒したという。その観音は今もこの寺にあると伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。