首に太刀跡を残した土仏の観音
どんな伝承か
越前国名蹟考は、田中山竜沢寺は曹洞宗で御簾尾にあり、開山の梅山和尚は能登総持寺の塔頭普蔵院の宗真和尚の弟子だと記す。寺には二寸ばかりの土仏の観世音が座す。梅山が京の六角堂の辺を通ると、小童十八人が土で三十三体の観世音を作っており、望んで一体を受けると、礼をする間に仏も童も消え失せた。のち修行の途中で民家に宿ると、酒を強く飲んで戻った主が客僧を泊めたことを憤り、女房が詫びるのも聞かず僧を害した。夜が明けると僧は心地よく寝入っており、包みを解いて本尊を見ると首の際に太刀の跡があった。主夫婦は恐れて涙を流し、発心して髪を下ろし受戒したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。