夜になるとやってくる小人の話
どんな伝承か
著者が高校時代の友人キクオから聞いた話。小田原に住むキクオの部屋は川のすぐそばにあり、土手ぎりぎりに建つ家で、窓の下に水面が見えた。夜遅くまで勉強し床の中で本を読んでいると、夜半に足元へ小人がやって来る気配がする。目を開けると足元の畳の上に身長三十センチほどの白い服の小人が立っている。起き上がろうとしても金縛りで動けない。小人は蒲団の端の角をつまみ、すっ、すっ、と持ち上げ、その隙間から外気が入り込む。やがて小人は消え、キクオもいつしか眠ってしまう。最近は毎晩のように来ると、キクオは真面目な顔で語ったという。
原典より
見ると、小人が、蒲団の端の角をつかんで、すっ、すっ、と上に持ちあげている。—— 奇譚草子(夢枕獏) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇譚草子(夢枕獏)
『奇譚草子』は、夢枕獏が雑誌の連載ページに書き継いだ怪異譚集である。「〜話」と題した短い話二十篇を収め、生霊の手、階下で蹴ったばかりなのに二階に座っていた祖母、雪山の死体、夜ごと来る小人など、多くは友人や知人から聞いた話を著者が聞き手として書き留める。ただし口上で架空の話も混ぜると断り、雪山の死体の話は読者の指摘で翻訳怪奇小説と同じ筋だったと認める続きの回を置く。末尾は箱根に住んだ元関取に憑いてスサノオと名告る存在の話である。