ちょうちんが割れた話
どんな伝承か
著者の家の近く、小田原の久野に、著者と同い年のせんちゃんが住んでいた。家は墓のそばに建ち、祖母には霊がわかるという。その家では毎年お盆に、仏壇わきの窓からちょうちんを吊るしていた。あるお盆の夕方、祖母が「ちいちゃんが来ている」と言い出した。ちいちゃんは、せんちゃんが生まれる一年前に四歳で亡くなった姉である。家の誰も本気にしないので、祖母は部屋の一隅に目を向け、来ているならそれをみんなに知らせてあげて、と呼びかけた。その瞬間、吊るしてあったちょうちんが真ん中からぱかりと割れたという。
原典より
そうおばあちゃんが言った時、ぶら下げてあったちょうちんが、突然、真ん中からぱかりと割れたのだという。—— 奇譚草子(夢枕獏) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇譚草子(夢枕獏)
『奇譚草子』は、夢枕獏が雑誌の連載ページに書き継いだ怪異譚集である。「〜話」と題した短い話二十篇を収め、生霊の手、階下で蹴ったばかりなのに二階に座っていた祖母、雪山の死体、夜ごと来る小人など、多くは友人や知人から聞いた話を著者が聞き手として書き留める。ただし口上で架空の話も混ぜると断り、雪山の死体の話は読者の指摘で翻訳怪奇小説と同じ筋だったと認める続きの回を置く。末尾は箱根に住んだ元関取に憑いてスサノオと名告る存在の話である。