正月元日に焼けた菅谷家と斬られた四人
どんな伝承か
大正五年の正月元日の未明、香取郡八都村神生の農家菅谷武雄の家が火事になった。この家は前の年の四月、池に飼っていた水鳥二羽を何者かに矢で射られたことがあった。十五歳の鈴木かねと十二歳の菅谷くみは外へ逃げ出して助けを呼んだが、武雄夫婦と幼い子二人の姿はなく、火はたちまち家を焼き尽くした。焼け跡から出た四人の亡骸には、どれも幾太刀も斬りつけた深い傷があり、焼かれる前に斬り殺されていたことが分かった。家財も焼けて何が奪われたかは分からず、武雄の懐中時計を探して灰から出てきたのは子の玩具の時計だった。
原典より
隣家をはじめ親戚のが響けつけて に努めたが、武雄夫婦選び 人の小側のが見えないので、 が聞いてるるうちに火は見るみるを いてしまった。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。