鮭の祟・延命姫伝説
どんな伝承か
銚子に近い四日市場の貧しい漁師は、鮭漁の前夜に訪れた旅僧から殺生を二三日控えよと諭され、振る舞いの蕎麦切を食べさせた。しかし女房に唆されて翌朝網を入れ、舟に満ちるほどの鮭を獲った。料理した鮭の腹からは蕎麦切が出てきた。漁師は長者となったが、生まれた娘は顔に赤い斑点のある縮れ毛の醜女で、母は産後に死んだ。年頃の娘は泊まった都の売卜者を慕って婿にしたが、男は入水を装って逃げ、娘はそれを信じて利根川に身を投げた。死骸は川口に流れ着き、川口明神として祀られた。伝説では娘を延命姫、売卜者を安部晴明という。
原典より
と、その一つの腹から数多の蕎麦切が出て来た。—— 日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。