現像前の乾板も読んだ長尾郁子の透視
どんな伝承か
福来が研究した二番目の神通力者は、丸亀市の長尾郁子夫人である。彼女は透視能力者としてよりも、念写実験の元祖として心霊研究史上に名を留める人であった。透視能力は明治四十三年六月ごろから現れ始めた。御船千鶴子の能力を報じる新聞記事を読み、子どもを相手に面白半分に透視を試みたところ、図らずも精神統一して透視できたのである。千鶴子と違い、夫人は実験者の方を向き、実験物に手を触れずに透視したので、手もとを疑う余地がなかった。福来は十月二十九日、任意の三文字を書いた厚紙を錫箔で二重に包み封印した実験物を作って菊池俊諦のもとへ送り、夫人に透視させた。夫人は重箱に触れることなく精神統一し、封入の「天成雨」の三字を的中させたのである。
原典より
天成雨の三字は、開封の結果、全然的中であつた。—— 観念は生物なり(福来友吉・心霊・念写研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
観念は生物なり(福来友吉・心霊・念写研究)
『観念は生物なり』は、福来友吉が諸雑誌に発表した論文を集めた心理学と心霊研究の論集で、日本心霊学会刊、序は大正十四年春に箕面山の麓で記されている。観念と身体の関係、夢、潜在精神と病気、プランセット(自動書記)、狐憑病の伝染や尼寺のヒステリー、宮本武蔵の剣道などを論じる。明治四十三年以来接した御船千鶴子・長尾郁子・三田光一ら八人の通力者の透視と念写の実験も報告し、「観念と身体との関係」から「生命学と心霊研究」までの十四篇を収める。