錫杖で泉を湧かせた弘法岩
どんな伝承か
初夏の照りつける昼下がり、下彦間の街道を行く旅の僧が農家に立ち寄って水を乞うた。この辺りは春先から雨が乏しく、留守番の老人は飲み水がないと断ったが、別の家の老婆は気の毒がって矢の窪まで清水を汲みに行き、僧に飲ませた。僧は恩は必ず返すと言って去った。数日後、宮前から家隆へ向かう道の脇、彦間川のほとりの大岩に僧がまた現れ、呪文を唱えて錫杖で涸れた川床を突くと、穴から水が湧いて岩の下は泉になった。僧は東国を巡っていた弘法大師で、時は弘仁十一年だったと伝わる。断った老人は恥じて詫び、大師の立った岩は弘法岩と呼ばれるようになった。
原典より
すると突きさした穴から水がわき出し、見る間に量が増してくるではないか。—— 田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説(田沼町(編)・田沼町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説(田沼町(編)・田沼町史)
『田沼町史 第1巻(自然・民俗編)――伝説』は、田沼町が編んだ町史第一巻のうち、伝説の節の大半とことわざの節の冒頭を収めたものである。僧や鎧の祟り、神社の霊験、佐野宗綱の出陣、藤原秀郷ゆかりの井戸、義民、地名の由来、落人、寺社の縁起など、町内各地に伝わる話を地名や家名とともに記す。伝説は英雄偉人・義民・地名・落人・寺社縁起などの項に分けて並べ、ことわざの節は調査員の協力で集めたものを五十音順に掲げるが、いの項で終わっている。