平城京の呪詛の人形
どんな伝承か
平城京の跡からは、細長い薄板に切れこみを入れただけの簡素な人形がたくさん掘り出されている。中でも大膳職の大井戸の底から出たものは、両方の眼と胸に小さな木釘が打たれていた。人の分身である人形を傷つけ、狙った相手に害を及ぼそうとした模倣呪術の跡と考えられる。古代から中世の人々は、人形を人より素直な心と精巧な魂をもつもの、仮面をつけた人が神になるように、人以上に人らしい存在と見ていたのではないかともいわれる。
原典より
大膳職の大井戸の底から出てきたものは、両眼と胸に小さな木釘を打ちこまれていた。—— 霊魂の博物誌――原始生命観の体系(碓井益雄・碓井益雄・民俗学・1982年(昭和57年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の博物誌――原始生命観の体系(碓井益雄・碓井益雄・民俗学・1982年(昭和57年))
『霊魂の博物誌――原始生命観の体系』は、動物発生学を専攻した碓井益雄が著し、昭和五十七年に河出書房新社から刊行した書である。原始・古代の人々が霊魂をどう考えたかを、日本と諸外国の神話・民俗・古典・言葉の資料から説き、気息や人魂、風や雲、鳥や昆虫、幽霊や影として現れる霊魂の姿と、内臓・心・感覚器官に宿るとされた霊の座を論じ、屎尿や屁、名前と言霊にも章や節を割く。序章と全九章からなり、各章末に参照文献の注を付す。