字引を覚えては焼いた見ずの若忍
どんな伝承か
享保のころ、本屋泣かせの二人の客として見ずの若忍と買わずの存良を歌う俚謡がはやった。若忍は須賀山村中宿の林家に生まれ、幼くして銚子の魚仲買に奉公した。主人に借りた大部の字引を毎晩読み、覚えた所を破っては焼き、ついに一冊残らず焼いてしまう。怒った主人に返せと迫られると、二度と見られないと思えば忘れないのだと答え、夜ごと書き続けて元どおりの字引を書き上げた。若忍はのち出家して京都の普門院の住職となり、誰も読めなかった清国の書状を読み解いたという。晩年、関白に望みを問われて故郷の諏訪神社への勅額を願い、享保十四年に没した。墓は笹川の延命寺にある。
原典より
この若忍は、本屋で本の表題を見て悟り、めくらずして知ったので「見ずの若忍」と人びとがいうようになった。—— 東庄町史 下巻(東庄町) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東庄町史 下巻(東庄町)
『東庄町史 下巻』は、下総の香取郡東庄にあたる千葉県東庄町の町史下巻のうち、「民話・伝説」の項である。須賀山の地名伝説、高部と羽計の狐の祝言、城山の大蛇、花香稲荷縁起、黒部川と児塚の由来、干潟十八ヶ村の名付け、姥捨ての定命窪など十五の項を収め、小南の七不思議や東庄七井の一覧も含む。半数あまりの項に伝承地の区名を添え、『かぎろひ』記念特集号や『県民の森の歌』、「上代郷明細記」「東荘志」、旧家文書などの出典を記す。