箱根のキャンプ地を囲む大勢の足音
どんな伝承か
箱根の山奥で育った山木一人は、中学二年の夏休みに仲間と芦ノ湖畔のムジナ窪という砂浜でこっそりキャンプをした。夜中、でんでん太鼓のような音と大勢の足音がテントの周りを回り、気がつくと朝になっていた。家族によれば、そこでは北伊豆地震の際に工事の飯場ごと十数人が土砂に埋まり、誰も見つかっていないという。翌年は白浜から沢を登った山中の平地にテントを張ったが、雨の夜に小枝を踏みながら大勢が斜面を近づいて取り囲む気配があり、明け方に遠ざかった。地元の年寄りの話では、そこは戦後に箱根で亡くなった人々を荼毘にふした場所だった。
原典より
足音はついにテントを取り囲むようになり、たくさんの目に見られている感覚がはっきりとする。—— 水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。