大学生の女性が首を吊った枝の軋む音
どんな伝承か
今野実がある夕暮れ、中禅寺湖のフランス大使館前の突端からかなり立木観音寄りに回り込んだ所で、腰まで湖に立ち込んで釣っていると、背後で木の枝がきしむような音がした。振り返っても暗く、枝を揺らす風もないのに、ぎいい、ぎいと音は続いた。やがてマスが掛かり、音のことは忘れた。駐車場に戻ると、別の釣り人から、あそこでは最近、宿の泊まり客の女子大学生が湖岸に一番近い木の枝で首を吊ったと聞かされた。後に聞いた話では、枝はお祓いをしてから切り落とされ、風もないのに人の重みできしむような音を多くの人が聞いていたという。
原典より
「あそこ、つい最近自殺があったらしいですよ。一番湖岸に近い木の枝で・・・・・・宿泊客が首を吊ったんですって」—— 水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。