後山谷の長い髪のおばさん
どんな伝承か
四十年近く前、小学生だった古杉隆一郎は高校生の兄に連れられ、奥多摩の後山谷へ初めてキャンプ釣行に出かけた。氷川駅からバスでお祭まで行き、林道を三時間歩いた斜面にテントを張った。兄と別れて塩沢でヤマメを釣るうち日が暮れ、明かりも時計もないまま林道からテントを探していると、見下ろした斜面に黄色いテントがあり、髪の異常に長いおばさんが、坊や、こっちと手招きしていた。下りようとしたところへ兄が懐中電灯を手に捜しに来て、照らしてみると、そこは降りられない絶壁で、はるか下を後山川が流れ、おばさんの姿はなかった。
原典より
声がするので目を凝らして見ると、そこには髪が異常に長いおばさんがいた。—— 水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。