弟の霊が告げた父の発病
どんな伝承か
長田幹彦の弟三郎は幼くして病死し、その後たびたび霊となって幹彦の前に現れた。兄弟は毎年、鎌倉大町原の下駄屋の二階を借りて避暑をするのが習いだった。家のすぐそばには、北条氏に討たれた和田一族を葬ったと伝わる和田塚という砂山があり、兄弟はよくそこで遊んだ。秋の近いある日、和田塚の五輪塔の台座の上で、浴衣姿の三郎の霊が石で絵を描きながら、早く東京の家へ帰らないと大変だ、お父さんが今朝から病気だと告げた。幹彦が上の兄と夕方の汽車で急いで帰ると、ふだん丈夫な父がその朝から狭心症の発作で寝込んでいたという。
原典より
ところが不思議なことに平常丈夫だったおやじがその朝から急に狭心症の発作をおこして寝ていた。—— あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。