老松の下に小さく写る裸の兵士
どんな伝承か
映画『八甲田山』で一躍知られた幸畑陸軍墓地は、青森市の中心部から約七キロの小高い丘にあり、広さ七千平方メートル、百九十九柱の英霊が埋葬されている。墓地を囲む土手には老松がうっそうと茂り、近くの子どもたちの絶好の遊び場になっていた。昭和五十二年の秋、青森市橋本に住む山口氏の友人が、山口氏の子息を撮った。写真は手ぶれで帽子と手足が上下に重なっていたが、それよりも老松の右下に、裸の男が一寸法師のように小さく写っていた。子息よりずっと手前にいるはずなのに小さいのである。雪中行軍の際に錯乱して軍服を脱ぎ、雪にのめり込んで死んだ兵士の亡霊かとされた。
原典より
昭和五十二年秋、青森市橋本、山口氏の友人撮影。—— お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年))
『お化けと幽霊』は、大高興が昭和五十三年に青森市の北の街社から出した、お化けと幽霊と心霊現象の解説書である。仮死からの蘇生や霊魂論に始まり、青森県内を中心とする心霊写真の実例、こっくりさんなどの霊界通信法、著者や知人が語る幽霊の体験談、江戸時代の『北越奇談』を著者が現代文に訳した天狗や鎌鼬の話を収める。問答の形でお化けを語る節、幽霊の存否論・分類・人相学、心理学者による心霊現象の否定を経て、巻末に心霊用語の解説を付す。