招魂社で父に逢った三歳の娘
どんな伝承か
文学士の石幡伊三郎は、日露戦役に通訳官として旅順へ出張し、外国人を戦場へ案内する途中、流れ弾に当たって戦死した。ちょうど同じ日、東京の自宅では、子守りの女が三歳の娘を背負って九段の招魂社へ参詣していた。家に帰り着いた娘は、きょうはお父さんに逢ってきた、と言ったという。それから数日たって、電報で戦死の報せが届いた。井上円了が『真怪』の中に書き留めた一件である。
原典より
* 死ぬ前愛兒に逢ふ母親* 引取った姉の幼女* 突然「ママ」と呼ぶ* 先刻逢ったばかりよ* 幽霊が飴買いに* 十銭紙幣が木の葉に* 幽霊たらう—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。