人俵の河原と煙と消えた入留満
どんな伝承か
慶長十七年三月、幕府は大久保忠隣を奉行として近畿に送り、所司代板倉勝重と協力して切支丹の嫌疑のある者を残らず捕縛させた。捕えた者は一人ずつ菰に巻き、四条から五条の鴨川の磧に三十石積、五十石積と積み上げて片端から転がした。役人は鉄棒で人俵の胴を叩き、改宗する者は俵を解いて赦した。日が傾いた頃、一人の僧が訴人に出て、もと南蛮寺にいた入留満が九条の片ほとりに隠れており、時ならぬに枯木に花を咲かせる邪法を使うと告げた。家臣の吉見太郎左衛門が庵室へ向かうと、小柄な男は十字を切って煙のように消えた。
原典より
小柄な男の姿は煙のように消えてしまった。—— 日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。