夜ごと地中から光を放った滝見の観音
どんな伝承か
宝永のころ、石神村の小名清水という所で、夜ごとに地面から怪しい光が放たれた。村人は狐か狸の仕業だと恐れ、日が暮れると戸を固く閉ざして往来も絶えたが、光はいつまでも消えない。ただごとではないと皆で掘ってみると、銅の観音像と、滝山浄名寺と刻まれた鐸がひとつ出てきた。堂を建てて安置し、黄檗宗の僧を庵主に迎えたが、一帯の神社を預かっていた野寺村の満行寺が訴えて、堂は壊された。役人は唐から渡った三体の滝見の観音のうち行方の知れぬ一体であろうとして、像を村に預けた。のち村の四軒のうちの一軒が焼けて家の者が死に、代官が哀れんでその跡に堂を建て観音を祀ったのが、いまの観音堂だという。
原典より
月もない、まっくらな晩というのに地面の一カ所が明るくなっているところがあります。—— 新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話(新座市(編)・新座市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話(新座市(編)・新座市史)
『新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話』は、新座市が編んだ市史の民俗編のうち、第四章「伝説と昔話」にあたる部分である。野火止の地名と在原業平の東下りを結ぶ伝説を『伊勢物語』や『新編武蔵風土記稿』などの記録とあわせてたどり、妙音沢・かしらなし・小僧ヶ淵・強清水などの場所をめぐる話、観音や地蔵の霊験・縁起の話を取り上げる。節ごとに解説を置き、『こども広報にいざ』などに載った再話や古老からの聞き書きを引く。