落武者を弔う御墓さま
どんな伝承か
六百年あまり前の暑い夏の日、どこかの戦に敗れて深手を負った落武者の一団が、南の方から小川の岸にたどり着き、草の中に倒れ込んだ。そこへ軍馬の足音が迫ってきた。一行は最後の気力を振り絞って立ち上がったが、矢を射かけながら押し寄せる敵にたちまち討たれ、皆その場で果てた。里人たちは亡骸を手厚く葬り、花や香を絶やさず供えて小さなお堂を建てた。お堂は御墓さまと呼ばれたが、今は小川も消え、墓地だけが名残をとどめているという。
原典より
このお堂は「御墓さま」と呼ばれたというが、今は小川もなくなって、わずかに墓地だけが残っておって、昔の名残りをとどめておるだけよ。—— 真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。