血で文字を描いた大前さんの鯉
どんな伝承か
大前神社のすぐ東を流れる五行川には大きな鯉が群れていたが、昔は誰も釣ろうとしなかった。こんな話があるからだ。川のずっと下流、下館藩の侍が魚屋で生きのよい鯉を買い、帰るなりまな板に載せて包丁を入れると、真っ赤な血が流れ出て大前大権現の文字になった。驚いた侍は五行川をさかのぼって大前神社を訪ね、神主にわけを話した。神主は五行川の鯉はみな大前大権現の鯉だと言い、ともに詫びの拝礼をした。以来、侍は毎年参詣し、行けない年は代参を立てたという。
原典より
そして「大前大権現」という字になったではないか。—— 真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。