尊氏の夢と境沢観音
どんな伝承か
元応二年、十五歳の足利尊氏は、七月九日の夜、大将軍として軍を率いる夢を見た。行く手に現れた僧のような者が、下野国芳賀郡根本郷の境沢の土中に久しく住む観世音である、武運と将軍の位を望むなら来て拝めと告げた。尊氏はわずかな供と旅立ち、境沢を探し当てて土を掘らせると、聖観音と馬頭観音の石像二体が現れ、そばには黒蛇と白蛇が守るようにうずくまっていた。尊氏は堂を建てて祀り、これが境沢観音となった。のちに幕府を開くと堂を改築し、康永二年には能仁寺を建てて守らせたという。
原典より
そうして、土の中を深く掘ってみると、果たして聖観世音菩薩と馬頭観世音菩薩の二体の石の尊像が現われたわ。—— 真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。