紫の涙を流した河童と河童松
どんな伝承か
山の根の松本谷戸と池子との境になる丘に、樹齢数百年という松の大木がそびえていた。丘の裾には、小さいが深い川が流れ、葦の茂るその川を土地の者はシジメッ川と呼んだ。水遊びの子供や洗濯の女たちが恐れたのはそこにすむ河童で、姿も色も自在に変えるので容易には捕まらない。ある夕方、百姓が川で馬を洗おうとすると河童が馬の尻に取りつき、暴れた馬に振り落とされた。百姓はこれを捕まえて縄で縛り、岸の松に吊るした。三日三晩たつと河童は泣き出し、その涙は紫色だったという。哀れんだ百姓は、女子供をいじめず馬にも取りつかないこと、山の根の川から立ち去ることを誓わせて放した。以後河童は姿を消し、松は河童松と呼ばれた。
原典より
お百姓が近づいて見ると河童の涙は紫色をしていたという。—— 逗子市史 別編1 民俗編――伝説(逗子市(編)・逗子市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
逗子市史 別編1 民俗編――伝説(逗子市(編)・逗子市史)
『逗子市史 別編1 民俗編――伝説』は、逗子市の市史のうち、別編第一巻の民俗編にあたる巻の一部である。池子・沼間・桜山・小坪・久木・山の根など市内の土地に伝わる伝説を収め、和泉から来た一行が金を埋めたという金山権現、行基の十一面観音と大蛇、六代御前の墓、為朝の矢の根井戸、頼朝と新箸の宮、河童松、お夏狐などの話を記す。伝説の章の末に河童や狐、庚申の夜の短い話を添え、続く方言・訛語の章では逗子の語彙を五十音順に並べる。