大蛇が化けていた怪力の作男
どんな伝承か
奈土の名主の家に、オバラクお爺と呼ばれる並外れた力持ちの作男がいた。草を積みすぎて倒れた馬を草ごと担ぎ、米を十俵も背負って佐原の町まで売りに行くほどの働き者だった。ただ人とあまり話さず、夜更けにひとりで出かける様子がある。雨もないのに下駄が濡れているのを見た名主が夜にあとをつけると、お爺は大須賀川で着物を脱いで水に入り、長さ六間もの大蛇に変わって泳ぎだした。大蛇はもとは松崎の坂田ヶ池の主で、巡礼を襲った罰に竜神から人の姿で働けと命じられ、三年たった今、早く池に帰りたいとつぶやいていた。名主がひそかに竜神へ許しを祈ると、数日後の大雨の夜、お爺は坂田ヶ池へ帰っていったという。
原典より
すると長さ六間(約一〇メートル)で米俵ほども太い大蛇になって泳ぎ始めたのである。—— 大栄町史 民俗編(大栄町) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大栄町史 民俗編(大栄町)
『大栄町史 民俗編』は大栄町の町史の民俗編で、ここに収められているのは第六章「ことばと生活」第一節「伝説」の部分だけである。北総台地にある町内の地区ごとに、源頼朝の鞍掛けの松、城主大須賀氏・伊能氏の話、弁天様と道祖神、狐・狸・河童・大蛇の話、作男や長者の話、古墳の埋蔵金の話などを伝える。伝説は歴史・神仏・動物・人物に関する伝説と「トーカとムジナの話」の五項に分けられ、末項では狐に化かされた体験とムジナの火の話を「〇」の箇条で並べる。