空の鍋に米を入れた息子の嘘
どんな伝承か
天理教の信者たちは、財産などなくなっても構わない、鍋を炉に掛けておけば神様が自然にその中へ米を入れてくださると信じていた。ある村に、息子が大の天理教信者で親父が大の反対派という家があった。息子は例によって、財産などいらない、鍋さえ炉に掛けておけば神様が米を入れてくださると頑張った。とうとう親子の意地比べになり、息子は空の鍋を炉に掛けた。親父がそっと物陰から様子をうかがうと、息子は周囲に人のいないのを見すまし、自分の袂から米を掴み出して鍋に入れていたという。信者たちは財産を蕩尽した挙句、茶っぱに糠や粃を入れて食べていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。