炎天の屋根に立てこもった少年
どんな伝承か
七月、少年はまた盗みを働いて姿を消した。母から連絡はあったものの、約束の日になっても来ない。二日遅れて母と学生に両手を取られ、ようやく著者の家に現れたときの顔つきは凄まじかった。上唇を吊り上げ、眉間に三筋の深い皺を寄せ、それでいて疲れ果てた鈍い目をしている。連れ出そうとした際、少年は二階の窓から屋根へ上がってしまい、逃げ道がないまま炎天の下に二時間余りいた。水をくれと叫んで戻った顔は真っ赤だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。