阿登久良山のきつねの美男子
どんな伝承か
小春日和の日、語り手は友人と三人でかごを背負い、阿登久良山のふもとへおけらを掘りに出かけた。昼の弁当どき、友人が、絣の着物に白い帯を締めた男が見えると言い出す。見れば、髪をきれいに分けた美男子が高下駄で山を登っていき、三人は見とれて掘るのも忘れてしまった。枝を折る音や下駄の音が近づいたり遠のいたりしながら、男は笠原山の方へ消えた。近くで下刈りをしていた作太郎じいさんに聞くと、そんな者は見えなかった、狐に化かされたのだろうと言われる。帰ってかごを見るとおけらは一本もなく、母にも、あそこには狐がいてよく人を化かすと言われたという。
原典より
見ると、はちわけをした美男子が高足駄で阿登久良山へ登っていく。—— 南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。