田のあぜで朝まで寝た話
どんな伝承か
語り手は五箇に住むいとこの政志の家に一晩泊まり、昼までもてなしを受けて、遅くならないうちにと帰途についた。ところが入相沢の家が見えてくるはずなのに一向に見えず、見覚えのない広い田んぼが現れ、気づけば田のあぜに立っていた。向こうにいた十六、七の美しい娘に声をかけようとすると、娘はすたすたと去り、山で草を刈る老人を呼んでも振り向きもせずに姿を消した。やがて黒雲が広がって薄暗くなり、座り込んだまま意識を失った。目覚めると朝で、あぜの草の上に倒れており、着物は裂けて泥まみれ、もらってきたさなぎの包みも手ぬぐいもなくなっていたという。
原典より
気がついたら朝になっているので、あたりを見まわしたら、あぜ道の草の上にいる自分を見出した。—— 南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。