雹を降らせた八幡様の硯石
どんな伝承か
鼻毛石の八幡様の境内に、硯石と呼ばれる岩がある。昔、身分の高い人が東北の悪者を討ちに向かう途中でこの地を通り、神社の境内でひと休みした。当時このあたりは家もまばらな寂しい山中だった。村人が行き先を尋ね、ぜひ供に加えてほしいと願い出たので名簿を作ることになったが、あいにく水がない。岩の上の窪みに水がたまっているのを見つけ、それを汲んで名簿をしたためたことから、硯石の名が付いたという。そのため穴の水をかき回すな、石に乗るなと戒められ、雨の折に石に上がって水をかき回すと雨が降るともいう。ある時、神社の芝居の日に子供たちが面白がって石にいたずらをすると、雹が降って村の青物が全滅したと伝わる。
原典より
むかしあるとき、神社で芝居をしたときに、子供がおもしろがって、この石にいたずらしたら、雹が降って、ムラ中青いもんなしになった。—— 宮城村の民俗――伝説・口頭伝承(群馬県民俗調査報告書 第23集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城村の民俗――伝説・口頭伝承(群馬県民俗調査報告書 第23集・群馬県民俗調査報告書)
『宮城村の民俗――伝説・口頭伝承』は、群馬県民俗調査報告書の第二十三集として宮城村の民俗をまとめた報告のうち、「口頭伝承」の章の「はじめに」と伝説・昔話の部分を収めたものである。赤城の麓の柏倉・三夜沢・鼻毛石・苗ヶ島・大前田などで聞いた話を、語り口を残した聞き書きと短くまとめた条とで記し、採集地を括弧で添える。俵藤太のムカデ退治や小沼の主となった赤堀道元の娘、地名や石の由来の伝説に続き、食わず女房や馬鹿婿などの昔話を並べる。