旅籠の主人に殺された六部の石
どんな伝承か
昔、奥州街道の氏家宿は旅人で賑わったが、日が暮れると人通りは絶えた。ある晩、長旅にやつれた六部が一軒の旅籠に宿を乞うと、主人はみすぼらしい身なりを見て一番汚い部屋に通し、茶も出さずに宿賃をせかした。ところが財布に小判がぎっしり詰まっているのを見るや態度を変え、上座敷でもてなして離れの風呂へ案内した。六部が湯に浸かると、主人は大石で風呂に蓋をして殺し、小判を奪った。その後、庭石のそばの木は植え替えても枯れ続け、客も寄りつかずに旅籠は荒れ果てて人手に渡った。石に六部の呪いがあると噂され、信心深い人々が石を移して念仏で供養し、六部石と呼んだが、今は行方が知れないという。
原典より
ほれがらしばらぐして、庭石のそばの木が、何でだが、みんな枯れっちって、どぉだに植え替えでも植え替えでも、すぐまだ枯れっちまんだど。—— 氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
氏家町史 民俗編――伝説・昔話(氏家町(編)・氏家町史)
『氏家町史 民俗編――伝説・昔話』は、氏家町の町史民俗編のうち、第五章「くらしと言語」の第一節「伝説・昔話」と第二節「ことわざ、俗言」の初めを収めたものである。昭和七年版『氏家郷土誌』の数編と町史編さん室などが集めた話から選んだ二十七話を土地の方言の語りに直して載せ、勝山城にまつわる歴史伝説や地蔵の信仰伝説が多い。各話の末に方言を主とする語注を付け、ことわざの節では日常に使われた俗言を頭の音(あ・い・う)ごとに並べる。