雷に打たれた作男の声が残るほいほい松
どんな伝承か
伊能の名主の家に、まじめな働き者と評判の作男、吾助がいた。ある朝まだ暗いうちに馬を連れて伊能原へ草刈りに行ったが、気づくと木につないだはずの馬が消えていた。吾助は「ほーい、ほーい」と呼びながら林や小川や土手を越え、野馬のいる矢作牧まで探したが見つからず、日が暮れてしまう。夜になると風が強まり、遠くで雷が鳴りだした。このまま帰っては名主に申し訳ないと、吾助は伊能原の塚に生える一本松に登り、もう一度呼びかけた。その瞬間、松に雷が落ち、吾助は命を落とした。それからは風の強い日にこの松のあたりを通ると、風音に混じって吾助の呼び声が聞こえるといい、村人はこの松をほいほい松と呼ぶようになったという。
原典より
とそのとき、松の木に稲光とともに雷が落ちて、吾助の命は絶たれたのであった—— 大栄町史 民俗編(大栄町) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大栄町史 民俗編(大栄町)
『大栄町史 民俗編』は大栄町の町史の民俗編で、ここに収められているのは第六章「ことばと生活」第一節「伝説」の部分だけである。北総台地にある町内の地区ごとに、源頼朝の鞍掛けの松、城主大須賀氏・伊能氏の話、弁天様と道祖神、狐・狸・河童・大蛇の話、作男や長者の話、古墳の埋蔵金の話などを伝える。伝説は歴史・神仏・動物・人物に関する伝説と「トーカとムジナの話」の五項に分けられ、末項では狐に化かされた体験とムジナの火の話を「〇」の箇条で並べる。