綾部の龍神と落雷の反駁
どんな伝承か
綾部から帰った一青年が、出口王仁三郎が京都府の警察部で取調べ中、警察部長の注文に応じて晴天に俄に大雷雨を起こしたと語った。しかし実際は、雷雨があったのは事実だが、その日の気温の関係で偶然に起きたにすぎない。翌日か翌々日、浅野文学士が取調べ中に警察部長へ「先日の雷をお聞きになりましたか」と尋ね、「あれは綾部の龍神が、罪もないのに我々が取調べられているのを憤って、俄に京都の空を驚かせたのである」と誇り顔に答えた。部長が「ではあの雷はどこへ落ちたか。府下の某地で落雷して無辜の農民を一人殺している。なぜこの役所に落ちて我輩を殺さなかったのだ」と突っ込むと、文学士は二の句が出なかったという。
原典より
成程去年の春、出口王仁三郎が京都府で取調べを受けてゐる際、或日取調中に急に大雷雨のあつたことは事實である。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。