山を歩き木の実を食べた六日間
どんな伝承か
体力が回復するにつれ、少年の記憶も少しずつ戻ってきた。父が何も食べなかったのかと尋ねると、「いんや、ぞうのみを取つて食うた」と答えた。ぞうのみは秋にこの辺りの山にたくさんなる赤い木の実である。どこを歩いていたのかという問いには「山さばかり歩いてゐた。それにみんな澤さばかり捜してゐたから見附からなかつたんだ」と言った。雨の日は立つと濡れたが這っていると濡れなかったといい、岩穴にでも入っていたらしい。欄干のない長い木の橋を渡り、壊れた板の隙間から水が見えたとも語った。恐くはなかったが寒かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。