天狗の神通力・京都祇園祭見物(北越奇談)
どんな伝承か
越後の慈光寺の境内には天狗が多く棲み、野宿する旅人に不思議を見せると言われていた。六月中旬、寺で働く若者が独りで留守番をしていると、髪を伸ばした旅僧が現れ、今日は京都の祇園祭だが行きたくないかと誘った。行けるものなら、と答えたとたん二人の姿はかき消え、鉦や太鼓でにぎわう大勢の人出の町に立っていた。日暮れまで遊んだのち、僧が菓子屋で干菓子を一箱買うと、たちまち元の寺に戻り、僧の姿はなかった。箱には京都二条通りの菓子屋の印があった。この山で天狗のうわさをした大工やきこりは、着物をはがされ杉の梢に掛けられたともいう。
原典より
寺の人々が、「この菓子はどうしたのだ」と言って、菓子箱を開けてみると、京都は二条通りの菓子屋某の印が押してありました。—— お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年))
『お化けと幽霊』は、大高興が昭和五十三年に青森市の北の街社から出した、お化けと幽霊と心霊現象の解説書である。仮死からの蘇生や霊魂論に始まり、青森県内を中心とする心霊写真の実例、こっくりさんなどの霊界通信法、著者や知人が語る幽霊の体験談、江戸時代の『北越奇談』を著者が現代文に訳した天狗や鎌鼬の話を収める。問答の形でお化けを語る節、幽霊の存否論・分類・人相学、心理学者による心霊現象の否定を経て、巻末に心霊用語の解説を付す。