浅草岳の雪崩地帯と雨やみの術
どんな伝承か
一九六三年の春の連休、著者の代わりに越後の浅草岳へ入る仲間が、二十八日と二十九日に雪崩の危険な地帯を通るので、その二日だけは雨を降らせないでほしいと頼んできた。予報ではその両日が最悪の天気だった。著者は前日の夕方、西の空に向かって三日間雨を降らせないよう念じた。すると朝鮮半島付近の低気圧が東へ進まずにとどまり、両日とも晴れ、三十日になって崩れ始めた。帰ってきた仲間は、雪崩地帯の二日間は快晴で真っ黒に日焼けしたと報告したという。
原典より
山から帰った連中の報告では、雪崩地区での両日は快晴であって、おかげでまっ黒に雪焼けしてしまったというから、まあまあ信用を落さずにすんでよかった 。—— 山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊と雑誌の一篇「ワシは安禄山」を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。「自然界はもちつもたれつ」「酒」「山」「兄との交信」の四部に、チョウや小動物、山や湿原の探検、酒と温泉の話とともに、横尾谷の岩小屋の幽霊、釜石の幽霊、木曾御岳の人魂、呪い殺しの実験、雨やみの術など著者自身の怪異体験をつづる。あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。