オトカ(狐)に魚を取られる話
どんな伝承か
高関の鯉屋で鯉を二匹もらい、背負って帰る途中、千石の岡山で取られてしまった。岡山はいまは団地になったが、昔は寂しいうえにオトカ(狐)の巣があり、魚を持って通れば必ず取られる悪い場所だった。関番のじんさんも、銃を脇の下に抱えて帰る道で、前掛けをした女が向こうから来るのに出会った。女は二間ほど手前でふっと消え、通り過ぎると今度は脇から勢いよくこちらへ飛んで来たので、やっつけてやろうと構えたが、目の前でぴたりと止まって見えなくなった。これもオトカのしわざだったという。
原典より
高関の鯉屋で二匹の鯉をもらって背負って来たが、千石の岡山でとられてしまった。—— 千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書)
『千代田村の民俗――伝説・世間話』は、利根川沿いの千代田村で行われた民俗調査の報告から、言語伝承の章を中心に抜き出したテキストである。赤岩・舞木・瀬戸井・福島などで聞いた長良神社や光恩寺、片目の白蛇、カクレザト、河童の伝説と、オトカ(狐)に化かされた話、大食・大力・変わり者の世間話、諺や洒落を、採集した集落名を括弧で添えて短く記す。冒頭には正月の松飾りと大晦日の行事の記事が、途中の文から始まる形で残る。