鎰掛の佐兵衛の神隠し
どんな伝承か
鎰掛に住む佐兵衛という男が四十歳ほどのとき、八ヶ岳へ木を伐りに出たまま幾日も戻らなかった。村人総出で捜すと、のこぎりなどの道具は見つかったが本人の行方は知れず、家族は死んだものとあきらめて仏事まで済ませた。ところが数年たって、佐兵衛はぼんやりした顔でふいに帰ってきて、天狗に連れられて銚子へ行っていたなどと取りとめのないことを口にした。四、五日するとまたふらりと姿を消し、それきり戻らなかった。家族は佐兵衛のために小さな石のほこらを建て、屋敷神として家のすぐ裏にまつった。そのほこらは今も「佐兵衛」と呼ばれているという。
原典より
家の者は佐兵衛のために小さなほこらを造り、屋敷神様にしてすぐ裏の所へまつった。—— 南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。