はんみょう坂のかつお節屋
どんな伝承か
語り手が子どものころ父から聞いた話である。越後から来たかつお節売りが、市の沢からの帰りだと言って、当時笠原にあった語り手の家に立ち寄った。夕飯の後、夜も更けたので泊まるよう勧めたが、翌日の商売に障るからと出て行った。夜中過ぎ、戸を激しくたたく者がいて父が出ると、かつお節屋が真っ青になって震えている。聞けば、宿渡のはんみょう坂まで来たところ、ばくちいわなの方から狐が何匹も飛びかかってかつお節を奪おうとしたので、荷を投げ出して逃げてきたという。翌朝、父が付き添って坂へ行くと、かつお節は散らばっていたが一本も減っておらず、父は化かされたのだろうと笑ったという。
原典より
翌朝はやく夜明けとともに、父が付き添って、はんみょう坂にきてみると、そこらじゅうにかつお節はちらかっていたが、一本もなくなっていなかったという。—— 南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。