雪の甲州・穂坂村への調査旅行
どんな伝承か
大正十五年三月二十日、雪の降る朝に浅野和三郎は甲州へ向かった。甲府駅で大野氏と落ち合い、韮崎から案内人に連れられて雪解けのぬかるむ山道を登り、日暮れに穂坂村の横森家に着いた。その夜は市太郎老人や村人から市兵衛の思い出を聞き、翌日は掛軸を見て、絵の具の鮮やかさに驚いた。午後にはかね代が掛軸の前で神懸りとなり、市兵衛そっくりの口ぶりで村人に語りかけ、この体は不動の力で生きているから火食はできないと告げたという。二十二日に晴れた甲州を後にした。
原典より
一里餘の里程に過ぎないが、少くも五六里歩いた位くたびれる。—— 二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は弘化元年、土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人六十四人が狂乱し、祈禱が効かず藩の役人が空鉄砲と犬で取り押さえた事件を、野島通玄の記録『甲辰奇怪記』の現代語訳で紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に曾祖父横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。