眷属を背負い番所で倒れた五人
どんな伝承か
野島と植田の二人の惣宰が、本当に悔いて皆で立ち去るなら罪を許すと申し渡すと、五人は承って一人ずつ十間ほど歩き、地面にかがんで両手を後ろへ回し、何かを背負う格好をして、眷属は残らず連れて行くから来いと叫んだ。すると境内の男女が次々に両手を広げて五人の背中へ飛びついた。五人は全員を背負う真似を終えると、岩だらけの険しい道を駿馬のような勢いで駆け出し、村の口の番所の前でばたりと仰向けに倒れて気を失ったが、半時ほどで起き上がって正気に返ったという。
原典より
すると、境内に坐つて居た男女の狂亂者連の中から、一人づつ雨手をひろげて、飛鳥の如く五人の背中へ飛びつくのでした。—— 二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は弘化元年、土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人六十四人が狂乱し、祈禱が効かず藩の役人が空鉄砲と犬で取り押さえた事件を、野島通玄の記録『甲辰奇怪記』の現代語訳で紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に曾祖父横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。