忌服の男を鳥居から威した白蛇
どんな伝承か
昔、隣村の百姓市右ヱ門は、母の葬式を済ませた翌日、疲れを取ろうと玉敷神社のご神湯をもらいに急いだ。宮の手前で隣家の弥作に会うと、まだ忌服の身で明神さまに参ると昔から必ず悪いことがあるというから、今日はやめてうちの昼湯に入れと引き止められた。市右ヱ門は迷信だと取り合わず先へ進んだが、胸には不安が残った。鳥居の手前まで来てふと見上げると、雌雄二匹の白蛇が尾を鳥居に巻きつけ、大口を開けて今にも飛びかかろうとしていた。市右ヱ門は叫んでその場に倒れ、長いあいだうめいていたが、通りがかりの人に水や薬をもらってようやく正気づいた。後には、神を敬わなかった自分が悪かったと会う人ごとに話したという。
原典より
市右ヱ門は、「きゃっ」と、その場に倒れました。—— 騎西町史 民俗編――伝説・昔話・妖怪(騎西町(編)・騎西町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
騎西町史 民俗編――伝説・昔話・妖怪(騎西町(編)・騎西町史)
『騎西町史 民俗編――伝説・昔話・妖怪』は、騎西町が編んだ町史民俗編のうち、方言一覧の末尾と第9章「伝説・昔話」を収めたものである。調査協力委員や地域の老人クラブを通じて集めた二十八話で、久伊豆明神(玉敷神社)の獅子、雷電社の雨乞い、和尚の説話、いぼとり地蔵、入定塚、念仏橋、狐やムジナに化かされた話などを、話者名や郷土誌の出典を添えて載せる。章のはじめに伝説と昔話の違いを述べ、神社・寺堂・塚と橋・行事のいわれ・妖怪談の五節に分ける。