殺された女房を祭る竜柱の化粧道具
どんな伝承か
家を建てるときに立てる竜柱は、建築の本によれば聖徳太子を祀るものだというが、この地には次のような話が伝わる。ある宮大工がお宮を建てるとき、拝殿の柱を一本短くしてしまった。困り果てていると女房に気づかれ、腹切り問題だと打ち明けたところ、女房は長い方の柱を切って同じ長さに揃え、沓石を置けばよいと教えた。建て前をすると、よくできたとひどく褒められた。ところが女房に教わったと知れては恥だというので、大工は女房を殺してしまった。それからは女房が祟って何をやってもうまくいかず、そこで女房を祀り、竜柱にヘイソクと紅・白粉・カモジ・櫛といった女の化粧道具を必ず付けて霊を慰めたところ、以後は順調にいったという。
原典より
竜柱にヘイソクと女の化粧道具(紅・白粉・カモジ・櫛)をかならずつけてやった。—— 千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
千代田村の民俗――伝説・世間話(群馬県民俗調査報告書 第14集・群馬県民俗調査報告書)
『千代田村の民俗――伝説・世間話』は、利根川沿いの千代田村で行われた民俗調査の報告から、言語伝承の章を中心に抜き出したテキストである。赤岩・舞木・瀬戸井・福島などで聞いた長良神社や光恩寺、片目の白蛇、カクレザト、河童の伝説と、オトカ(狐)に化かされた話、大食・大力・変わり者の世間話、諺や洒落を、採集した集落名を括弧で添えて短く記す。冒頭には正月の松飾りと大晦日の行事の記事が、途中の文から始まる形で残る。